この記事は、2026年夏に行われたインタビューを書き起こしたものです。ヤンさんは20代のソフトウェアエンジニアで、受託開発の会社とSaaSスタートアップを経て、この春、メガベンチャーに転職しました。かえるさんはヤンさんの職務経歴書の作成や面接準備のお手伝いをしました。お話を聞いたのは、入社から二ヶ月が経った頃です。

二ヶ月経って

時間が経つのはめっちゃ早くて、もう二ヶ月が経ちました。全然余裕ではないです(笑)。サービスの規模が大きいので覚えることが多かったり、社内用語が多すぎて何を言ってるんだろうっていうことがたまにあります。オンボーディングはちゃんとしていますけど、自分からしっかり求めていかないと誰も助けてくれないという感じではありますね。

僕がいるのはサービス横断の共通基盤を見ているチームです。複数のプロダクトが共通で使うデータを、ある一つのプロダクトが全部抱えていて依存関係が重たくなっているという部分があって、それを整え直すということを最近はやっています。

チームの皆さんはすごく優秀です。コードを書くという実装の部分もそうなんですけど、そこに閉じずに、プロダクトをどうするべきなのかという議論が自然に深くできているところにそれを感じます。サービス志向というか、ユーザーにどういう価値を届けられるのか、最速でそれを届けるにはどうしたらいいのか、みたいなことを常に考えていて、そしてそれを実行に移す技術力も持っているという、バランスのよさを感じます。そして新卒で入ってくる人のレベルが高い。今リードを務めているのは新卒二年目の方なんですけど、各方面から来るいろんな問い合わせをバンバン捌いていて、すごいなーと思って見ています。

「理科が好きなら、高専どう?」

僕は子どもの頃、理科が好きでした。宇宙とか、化学とか、微生物とか、いろんな本を自分で買って読んでいる子どもでした。試験管やらフラスコやらを買って何か実験しようかなと思ったこともあります。お金がなかったのでやりませんでしたけど。

進路に高専という選択肢が入ってきたのは、中学の担任の先生がきっかけです。東日本大震災で被災して、僕の地元に移り住んできた先生でした。三年間ずっと担任で、どうやら僕の理科好きが漏れ出ていたんでしょうか(笑)、「理科が好きなら、高専どう?」と勧められました。

高専は僕の地元にはなくて、全然存在を認識していなかったんですけど、県の反対側にはあったみたいです。県の反対側ですから、ずっと寮生活。親は寂しかったって言ってました(笑)。高専といっても、僕が進んだのは電気工学科。プログラミングの授業もありましたけど、それでプログラミングにのめり込んだというわけでは決してないです。当時は陸上に打ち込んでいました。

割と本格的にプログラミングをするようになったのは高専五年のときです。五年生ってあまり授業もなくて、研究も終わっているし、結構暇なんですよ。ネットサーフィンをしていたら「プログラミングで稼げる」という話を見て、パソコンが強い友人と本屋に行って、HTMLの本なんかを買って、自分のパソコンでホームページを作ってみたのが始まりです。やってみたらおもしろいなと。

そこからJavaScriptや、PHPみたいなバックエンド系の言語も触るようになって、データベースも合わせて、フレームワークも何も使わずにフリマアプリみたいなサービスを一から作って公開してみたりしました。全然ちゃんとしてなくて、世に出せるようなものではないですけどね。

高専からは大学に編入して物理を専攻しました。ぼんやりとエンジニアになろうと思っていましたが、情報系の授業はほとんど何も取っていないです。人が前に立って説明しているのを聞いて学ぶみたいなのが苦手なんですよね。自分で本を読んで学びたい派です。コードの書き方みたいな話から、アルゴリズムなどの理論系の分野まで、いろいろやりました。一時期は「OSを作る」みたいな本を読んでいて、秋葉原で中古PCを買ってLinuxを入れて試したりしていました。

大学生活はコロナの真っ只中でした。高専の卒業式も、大学の編入式もなく、歓迎ムードなしにただ入った感じです。授業もリモートで、人と会う機会がありませんでした。

コスパのよい就職、スカウト待ちの転職

新卒の就職活動では、大企業よりベンチャーに行くぞということを考えていましたが、それ以外では全然真面目にやっていません。エントリー量も少なくて、一社受かったらそこに行こうかな、というくらいの気持ちでした。結果、最初に内定をもらった受託開発の会社に入社しました。コスパは、ええ、よかったと思います(笑)。

この会社は、要件定義から開発、リリースまで全部やっている会社でした。新卒で入ったこの会社の存在は、今振り返ってもめちゃくちゃでかいです。一番は人の繋がりですね。同期や当時のエンジニア仲間とは今でも連絡を取っていて、一緒にLT会へ行くこともあります。技術の面では、AWSを強く推奨している会社で、システム構成をCTOと壁打ちしながら書いたりしていたのが身になりました。

一年半くらい経って、転職を考えました。やりきったから次へ、というわけでは全然なくて、動機はやりたいこととの乖離です。受託なので、案件が数ヶ月ごとに変わって、リリース後のプロダクトを見続けることがないんですよね。その頃いろいろLT会みたいなイベントに参加していて、自社プロダクトを持っている会社の話を聞いていくうちに、作った後まで面倒を見られるソフトウェア開発に興味が湧いてきました。

転職活動は基本受け身でした。転職サイトに登録して、スカウトが来たら返信してカジュアル面談して…ってやっていたら、自分から応募せずに決まってしまった、みたいな。いい感じに進んだ二、三社と話して、最初に決まったSaaS企業へ転職しました。

この頃の面接では何も話せなかったのを覚えています。ちょっと深く聞かれると何も言えなくて、面接怖いなってなってました。決まった会社の面接は、雰囲気的には「SQLのクエリが遅かったときにどう調査しますか」みたいな、一問一答のクイズのような技術質問が大半で、そんなに経験を深く聞いてこなかったのがラッキーでした。

改めて、とても受け身ですよね。我ながらもうちょっと考えたほうがいいよなとは思います。当時の自分に何か言えるなら、そう言うでしょうね(笑)。

メガベンチャーというものがあるらしい

そうして入ったこの会社は、店舗運営を支えるSaaSを自社開発しているスタートアップでした。エンジニアとしてすごく濃い経験が積めたと思います。

機能開発をして、ステージングに上げて確認してリリースする、みたいなのすら僕には新しいことでした。前職では開発のあとは別の人がやってて、その後は自分は触らない、みたいな感じだったので。さらには、リリース後に不具合が出て修正を加えたり、障害対応をしたりなんてことも。

途中で担当した大手の案件では、他のチームとの協力とか、設計とか、ソフトウェア開発のいろは的なことを学べました。ただ、その顧客だけは別格に規模が大きく、特別対応なんかもあって、結構受託っぽくなってたっていう現実もありましたけどね。汎用化の計画はもちろんありましたけど、僕がいるうちには叶わずでした。

それから二年くらい経ったあたりで、「メガベンチャーというものがあるらしい」と耳に入ってきて、気になりだしました。話によく聞くようになったのもそうですし、ちょっと前に一社目の同期がメガベンチャーに行ったというのもあります。

メガベンチャー、どうして気になるんでしょうね。まずメディアの露出がでかい気がします。「優秀な人がいますよ」とか、いい情報が耳に入ってくる。あとは、エンジニアとして取り組めることの幅も広そうですし、人脈も大きくて、優秀な人が集まりそう。これからのキャリアを考えるうえで、いろんな優秀な人と仕事ができるのは魅力だなと思っていました。

そんなわけで、また、転職活動を始めました。

自分で選んだメガベンチャー

前の転職では何も準備をしなかったので、今回はちゃんと準備して進めると決めていました。かえるさんを見つけて連絡を取ったのもそういう理由です。経歴について深く突っ込んでもらって、面接の場で話す内容がたくさん湧いてきました。

うまくいかなかったこと、一番はライブコーディングかな。面接の最中に「このコードをリファクタリングしてください、AI使っていいですよ」と言われるのがあって、で、もう、惨敗。AtCoderでやるようなコーディングには慣れていて、面接ではアルゴリズムが来るのかなと思っていたら、がっつりクラス設計が来ました(笑)。全然手応えがなく、今振り返ってもどういう風にやり方を変えたらよかったか、正直あんまりわかってないです。

でも他には、うまくいかなかったことはあんまりないですね。不採用イコール失敗ではないですし。「合わないな」というのはありましたけど。ちゃんと答えられても落ちるときは落ちて、それは合わなかったんだろうな、という感じです。

結果的には数社からオファーをもらいました。今回は「最初に決まったところ」なんて決め方はせず(笑)、ちゃんと選びました。選ぶ際に迷いはほとんどなかったです。決め手はやっぱり、エンジニアとしてこれからやることです。

入社を決めた会社は、オファーを受けた段階でチームも決まっていました。複数プロダクトから参照される共通基盤というのは、自分としてもやりたいことでした。他社の新規事業のオファーもおもしろそうではあったんですけど、僕の場合は、既存の大規模サービスを相手にすることへの興味のほうが大きかったです。ビジネス的なものよりも技術的なものへの興味が大きいというのは、理科好きの延長かもしれませんね。

あとはカルチャーも。冒頭でも話しましたけど、入社した会社には、ユーザーにどういう価値を届けるのかという強いサービス志向があります。そしてその前ではチームの仲間は皆平等という文化があります。例の新卒二年目のエンジニアがオファー面談に同席してくれたんですけど、話を聞いていて、その文化が根付いているな、本気で根付かせようとしているな、と感じることができました。これはいいな、と思いました。

振り返ると、今回の転職活動は100点ですね。

若い自分の100%へ

僕は結構飽き性なところがあって、その飽きの賞味期限は二年くらいな気がしています。その二年のうちに、何かしらのリードはしたいですね。テックリードなり、何かのプロジェクトのリードなり。

リードはきっと大変なんですけど、今回の転職活動中にある会社の人から「まだ若いから、次は自分の100%が出せる職場がいいですよ」って言われて、それが結構印象に残っているんですよね。リードは負荷がかかると思いますけど、一回やっておいてもいいかなと思っています。

でも正直二年後どうなってるか分からないです。まだずっとここにいるかもしれないですし。