当たって砕ける。凹むけど。
2025年1月11日 • 10 min read • 4,779 words中小SIerからメガベンチャーに転職したブロッコリー🥦さん(30代女性)のお話
この記事は、2025年一月に行われたインタビューを書き起こしたものです。ブロッコリーさんは30代前半の女性で、中小のSIerに勤めるソフトウェアエンジニアです。約三ヶ月の転職活動を経て、日本のメガベンチャー二社からオファーをもらいました。お話を聞いたのは、転職活動終了後、入社が数ヶ月後に控えている時期です。
大学では化学系の研究をしていて、修士課程まで行きました。正直あまり楽しくなくて、向いてないなと思っていました。それでも修士まで行ったのは、あの、お恥ずかしい話ですが、学部生の時は授業とか研究で忙しくて、その隙間に就活なんてできず、あー、こりゃあもう進学しかないなと。
この研究内容だと多くの人はメーカーとかの研究職になったりするんですけど、私はさっき言ったようにあまり研究が好きではなかったので、同じ理系就職ではあるんですが、ガス会社に就職しました。ガス会社に入ったのは、いろんなことができそうだなという割とぼんやりした理由です。(笑)メーカーとかだと僻地に飛ばされるとも聞きましたし。入社した会社ではインターンをしていて、そのおかげで比較的すんなりと入社できました。
ガスって日本では採れないので、外国で採れたものが液化されて運ばれてくるんです。それをまた温めて気化させてガスとして使うんですが、温め方そのものや付随するオペレーションを含め、プロセス全体での効率を上げるみたいな仕事をしていました。
しかしそのガスの会社がですね、結構大変で…。自分のキャパが足りてないというか。持ってるスキルでは間に合わないレベルの仕事を日々あっぷあっぷしながらこなしている感覚がずっとありました。自分が重く考えすぎちゃってるというのもあったんでしょうけど。周りの人も大体みんなあっぷあっぷして限界までやっていて、うまくチームからサポートを得るのも難しい状況でした。
長めにお休みしている時に、いやー、こりゃ続けられないなーと思って転職活動を始めました。死ぬ気でやりました。(笑)スピード重視で、最初にオファーをくれた中小のSIerに転職しました。IT業界未経験でしたし、私としては、苦しい時に拾ってもらえた、という感覚です。この会社が今勤めている会社です。
この会社で経験したことを振り返ると、ソフトウェアのなんたるかもわからない中で、二つ目の案件で二年ほどにわたってバックエンドにインフラにと、ある程度網羅的に触れられたことが一番ありがたかったなと思います。
一方、受託会社なので、納期までに低コストで納品するということが一番の目的になってしまう。それは正解ではあるんですけど、なんだろう、後々システムの面倒を見ていくということから逆算するのではなくて、今作り切ることが重視されているのを感じます。納期ってあらかじめ決まっていてとても大事なので、何かをする時にもっといい方法があっても、それを選択するよりは納期が守れる方を選択する、みたいなことに当然なります。そんな経験をするうちに、運用のことも考えたサービス開発をもっとしてみたいなと思うようになりました。
とはいえ、私がさっき言った案件はこれに近くて、二年くらい自社開発の現場に出ていました。がっつり新規開発というほどではなく、保守開発という感じです。それでも、リアルタイムで使っている人がいて、その人たちからのフィードバックを受けつつシステムを開発していく、というのが楽しかったです。そういうサービス開発をもっとやりたいなと思いました。引き続き受託の会社でもそんなチャンスがあるにはあるのですが、どうしても受託だと運任せの「案件ガチャ」になってしまうので、自社開発している会社に転職することを考え始めました。
そもそも前の転職の時点で、最初から自社開発企業を目指していればよかったのかな、と思う部分もあるといえばあります。当時も選択肢になかったことはないですが、レベルが高そうで無理かな、という気持ちがありました。あとは急いでいたので転職エージェントが紹介してくれる募集だけを見ていたということもあります。
転職活動は予想通り難航しました。武器を持たずに核戦争に向かう気持ちでした。(笑)
無理だろうと思うほどにレベルの高そうな会社を意識して受けました。まあやってみて無理だったら他のところに広げていこう、みたいな。そうするとやっぱり全然技術レベルが足りてないなと感じる面接があって、気持ちが凹んだりしました。分かっちゃいたけど、自分のレベルの低さが証明されたみたいで、「やっぱそうですよねー」と。一方で、私は本当に大したことをやってきていないんですけど、それでも仕事でやったことのプロセスや、どう取り組んだかをしっかり聞いてくれるところもありました。なので、諦めないでよかった、というか、ぶつかっていってよかったなと思いました。
会社によって求めていることが違うというのを体験できたのもよかったです。一口にメガベンチャーといっても、スキル面で既に高いところを求めているところもあれば、まだそのレベルには達していないけどこれから頑張ってキャッチアップしてくれそうみたいな、モチベーションみたいなところを見てくれるところもありました。スキル以外の部分では、オファーを頂いたうちの一社がカルチャーについてよく聞いてくださったのが印象に残っています。うちはこういうカルチャーを大事にしているんですけど、自分に当てはまるものはありますか、エピソードがあれば教えてください、みたいな。
私の場合、武器がない中でもうまくいったのは、現職での心掛けが少しあると思っています。工夫や改善ができそうなことがあれば意見を言っていこう、みたいなことは現職で意識していたので、面接でも自信を持ってアピールできました。面接で語れるネタがあったのは幸いでした。ほんと、日々の業務から武器を作っていく意識は大事だなって、当たり前だけど思いました。受託開発だと難しいところはありますけど、最終的に裁量がなかったとしても、比較検討みたいなことはできるはずなので、喋れないことはないという気もします。とはいえ、年次・ポジションによるんですかね…。ある程度上にいかないと決められた設計を元に開発だけやっていくっていうのも多い気がするので、それだと難しい気もします。
逆にこれをやっていたらもっとうまくいったかも?ということについて考えてみると、これは受託開発限定の話かもしれませんが、案件をちゃんと選ぶというのがあります。私の場合、現職最初の案件はほぼ「関係ない」案件で、面接などで触れられることがありませんでした。どういう案件だったかというと、ExcelのデータをBIツールを使ってグラフ化してお客さんにダッシュボードとして納品するというものです。正直ソフトウェア開発者の経歴としてはアピールできるものではありませんでした。案件に入る時に自分から「こういうところに入りたいです」みたいなことを強めに言うべきだったなと今になって思います。当時は流れるままに行ってしまいました。
私の場合、もちろん面接に呼ばれないこともありましたけど、全体を通して書類で苦しんだという感じでもありませんでした。志望度の高い企業のうち四社から面接に呼ばれました。職務経歴書、他の人のを見たことがないので何が効いたか分かりませんが、ただ業務内容を書くんじゃなくて、自分がどんなことをしたとかどんな工夫をしたとかは詳細に書くようにしました。
ポートフォリオも一応作りました。でもあまり深掘りされていません。なんで作ったの?くらいは聞かれましたけど。私の場合は使ってみたい技術の練習がしたくて、Rubyを使ったWebアプリケーションを作りました。面接で話にのぼることはありましたけど、刺さっているというか、それがよくプラスに働いたという感じは特にしませんでした。
私が入社を決めた会社の面接は、とてもフランクでした。もちろん礼儀的なところはきちっとしていたんですけど、普段の仕事の感じ、同僚みたいな感じで話を聞いてくれました。おかげでリラックスして自分の話したいことを話せました。話し方もそうですけど、あと、いろんなポジションの方と話せたのは嬉しかったです。社内の雰囲気とかコミュニケーションの取り方のイメージが沸きやすいので。
逆に、喋りにくいというか、「なんでなんですか」みたいな感じで厳しく詰められるような面接の会社があって、そこは心が折れかけました。私がメンタル弱いタイプっていうのもあるんですけど。落ちたかなっていうのを途中から感じてやりにくかったです。面接で「なぜなぜ」を聞くべきなのは分かりますが、否定的な感じが伝わってきて辛かったです。あとやりにくかった例では、Web面接でカメラが妙に遠い人がいたり、カメラの位置がおかしくてずっと横を向いて喋っているような人もいました。正直印象はよくなかったですが、こういう話はまあ、コミュニケーションの取り方に比べれば些細なこぼれ話程度のことかもしれません。
私の経験を通して、同じ境遇にいる方に何かアドバイスするとしたら、「まずは当たって砕けろ」です。正直私自身、人気企業に応募するのは「この私が?」という恥ずかしさみたいなものがありましたが、やってみるだけやっていいのでは、と思います。それをやったおかげで見えてきた世界というものがありました。
入社を決めたのはHRテックの会社です。私が入ることになるチームは直近ではモノリスからマイクロサービスへの移行に取り組んでいて、入社後、まずはたくさんのAPIを書くことになると聞いています。私が使ったことのない言語とフレームワークを使うので、本を読んだり自分で触ってみたりして勉強しています。
ここまでのキャリアを振り返ると、私が理想とするよりずっとこまめに転職をしてきているなと思います。次の会社ではもっと長くいたいです。五年、十年とか。もちろんやってみないと分かりませんけど。少なくとも、色々なプロダクトを抱えているので、飽きるとかはなさそうです。
長くプロダクトに関わる中で、リーダー的なポジションに行けるようになりたいです。これまではずっとジュニアレベルでやってきているので、タスクを渡されてそれをこなして、の繰り返しです。何か専門的な、ここだったら任せろという分野を持って、教育ができるとか、相談されるとか、チームの方向性を決めるようなポジションに行きたいです。
この「上を目指したい」と思う気持ちは、なんでしょうね。純粋に山があれば登ってみたいと思うタイプなのかもしれません。好奇心かも。一旦登ってみて、嫌だったら下ろう、みたいな。
リーダーになるというのもそうですし、自分がこのサービスをよくしたな、って思える仕事がしたいですね。
色々経験したことを話しましたが、総じて、私の今回の転職は大成功です。苦しい戦いでした。とにかくほっとしています。ありがたいことに年収は大幅に上がりましたし、それよりも、愛着を持って長くやっていけるプロダクト開発ができる現場につけることがとても嬉しいです。
さっきも言いましたが、当たって砕けるのは大事です。企業との相性とか、マッチングはあるんだなーと実感しました。箸にも棒にもかからんということもあれば、ちゃんと面接で深く聞いてくれたところもありました。年齢的にも若くもないのにそれでも面接してくれましたし。メガベンチャーに興味があるけど自信がないという方がいたら、諦めずにぜひ、と伝えたいです。
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